活動報告

第12回例会卓話「電力・ガス自由化の現状と行方」

2016年09月30日

「電力・ガス自由化の現状と行方」     
    TCAコンサルティング(株) 大澤 孝夫様





はじめに
1、電力自由化の現状と最後の規制分野(家庭規模)の自由化
2、海外の電力自由化の状況
3、電力会社の選択とリスク
4、新電力(PPS=特定規模電気事業者)に切り替えるメリット・デメリット
5、ガスの自由化と一般電気事業者の反転攻勢
6、将来予想される中小新電力の消滅と電力会社とガス会社の動向
                                                         
1、電力自由化の現状と最後の規制分野(家庭規模)の自由化
  
(1)電力自由化の状況
 平成28年4月1日から、家庭向けの電力小売りが自由化になります。家庭向けの市場規模は、約8兆円と言われています。既に2000年から大口需要家から自由化になっていますが、高圧、特別高圧の新電力(特定規模電気事業者=PPS)は、799社になっています。 平成27年(特別高圧・高圧)までに新電力が供給している電力量は、全体電力量の7.7%になっています。
資料1「経済産業省・電力の小売全面自由化の概要2015年11月版」
P4 これまでの自由化と残された規制分野(小口)の自由化
P5 これまでに自由化された部門の新規参入者の割合(15年間で7.7%)
P6 小口(規制分野から自由化) 自由化される市場規模
P9 登録された小売電気j業者(業種別)・・旧名 新電力(PPS)
P17・18・19  全面自由化後の電気事業の類型と規制が変わりました。
   
今回の低圧(小規模部門)の新規参入者は、200社を超えました。新電力は届け出制のため、雨後のたけのこ以上に伸長しているのが現状です。許認可ではないので、例えば、自社電源がなくとも、届け出できます。(他人の発電機と需要家があればOK)。あるいは、太陽光の発電所と需要家があれば、発電事業者として届け出できます。ちなみに、倒産が多くなれば、将来は、届け出制が変わる可能性があります。
法律上における事業類型の規定が、平成28年4月から変更になりました。
これまでは、東京電力等を「一般電気事業者」、新規参入者を「新電力」(PPS)、IPP(卸販売=独立系発電事業者)の3つでした。
完全自由化後は、「発電事業者」(届け出制※)、「一般送配電事業者」(許可制)、「小売電気事業者」(登録制)の3つになります。※例:東京電力は分社化され、発電事業者=東京電力フユエル&パワー、一般送配電事業者=東京電力パワーグリッド、小売電気事業者=東京電力エナジーパートナーの3社になった。なお、新電力は、発電事業と小売電気事業に、IPPは、発電事業者となる。

(2)今回自由化になった小口分野での電力購入先の変更の概況
 平成28年5月末日現在での低圧需要家(今回の自由化部門)における電力会社の切替の特徴は、国の機関によれば、電力会社の切り替申込数が、103万5千件に上った。すなわち、契約総数(市場)の約1.7%が切り替えた。首都圏と関西圏で約85%と大半を占めています。既存の電力会社別の申込数は、以下の通り。



 平成28年4月9日現在の日本経済新聞によれば、電力会社を変更先の企業は、東京ガス(24万2千件)、大阪ガス(11万件)、JXエネルギー(10万件)、東急パワーサプライ(3万件)、HTBエナジー(1万件)、他である。  
 切替先は、ガス会社系が最も多く、次に石油元売り系の会社になっています。概ね電力の安定供給できる会社が選択されていると言える。但し、HTBエネジーは、契約切り替えたが、4月1日現在は、供給のメドが立っていない。



(3)低圧での電力値下げ合戦の模様
東京ガス・JXエネルギー・昭和シュエル・ソフトバンク・KDDI・東急パワーサプライ等の
 新電力は、東京電力より、3%~6%安いと宣伝してきたなかで、東京電力等の一般電気事業者も負けじと、安くなるメニューを発表している。こうした東京電力等の値下げに対抗して、新電力は、セット割引を追加して安い料金を発表している。さらに、東京電力等は、黒字決算を背景にして、積極的に新電力への攻勢や、既存の高圧顧客へ割引提案を行い、そして、春にも再度値下げを検討していると発表しています。また、関西電力(平成28年7月予定)・中部電力が東京電力管内で電力小売りを開始すると同時に東京電力も関西電力・中部電力の小売りを既に開始しています。

(4)電気料金が一番安い会社が10社!ある?
 料金プランが乱立していると同時に、電気の契約料金の契約が複雑なプランが多く、比較することが簡単ではありません。また、「値下げ合戦状況」なので、年間○○円安いということも、刻々と変わってきています。まるで、携帯電話の値下げキャンペーンと似た状況になってきていると言っても過言ではありません。各電力会社のホームぺージでは、○○電力会社より14%安い等広告していますが、○○電力会社も、新電気料金プランを多数発表してため、消費者が判断に迷っているのが現状のようです。

(5)新電力の料金請求遅れ等のトラブル続出
 6月24日電力広域運営推進機関によれば、電気の契約が新電力に変わっても、電力使用量の集計は、東電HD傘下東京電力パワーグリッドが担っていますが、切替が集中したため(?)約2万2千件の電力使用量の通知が遅れている。また、そのうち6千4百件の電力使用量が不明で復旧困難だとされている。このため、新規に参入した小売電気事業者は、電気料金の請求を消費者にできないため、東電PGに損害賠償を請求する企業もある。さらに、新規に参入した小売電気事業に誤った電気使用量が通知されるケースもあったことを東電PGは発表している。スマートメーターに切替えた後と前の使用量を重複してカウントしていたという。
 電気料金が請求されてこないのであれば、電気料金を安くしたい方は、新電力に切替えた方が得策?かもしれない。(すみません)

(6)電気料金が少し安くなっても帳消しになるどころか値上がります!
 ①日本の再生可能エネルギー発電促進賦課金が値上げになります。
再生可能エネルギー発電とは、風力・バイオマス・太陽光・地熱・水力等を言います。個人も法人も使用した電気使用量1kWh当たりに加算されており、平成28年5月分から値上げになる。政府は「太陽光発電の余剰電力買取制度」をつくり、平成26年9月まで「太陽光発電促進付加金」でしたが、平成26年10月からは、「再生可能エネルギー発電促進賦課金」(風力・バイオマス・太陽光・地熱・水力等)に統一された。現在、1kWhにつき、1円58銭ですが、平成28年5月分から、2円25銭/kWhを全ての需要家から徴収する。
事例A:一般的な家庭で、21,600円/年の負担になる。
月平均使用量の場合=800kWh×12か月=9,600kWh/年 
1家庭の割安になる金額は、3,000円/ 年~10,000円/年
事例B:法人で、6,000,000kWh/年×2.25円/kWh=13,500,000円/年

②新たな「石油石炭税」が電気料金に加算されます。
   平成28年6月1日から使用した電力使用量1kWhあたり、9銭(税込)が加算され請求されます。
③一般の方には、あまり知られていない「電源開発促進税」を皆さまは、支払っています。
    電力使用量1kWhあたり、4銭が加算されて支払っています。(表記なし)

   納税義務者:一般電気事業者
財務省の統計を参照(単位:億円)
2002年度(平成14年度) - 3,768     
2001年度(平成13年度) - 3,686
2000年度(平成12年度) - 3,745    
1999年度(平成11年度) - 3,651
1998年度(平成10年度) - 3,572    
1997年度(平成9年度) - 3,534
  

2、海外の電力自由化の状況

(1)イギリス
   1990年代に電力自由化を行った英国ですが、新規参入者が増え、電気料金が下がったのは、当初だけで、その後、電力会社の合併買収で発電・小売市場の寡占化がすすんだ。電力会社は、燃料高騰を理由に値上げを繰り返し、1015年の一般家庭料金は、2014年を基準として、2.4倍に上昇した。企業向けの料金も欧州全体の平均より60%高くなった。

(2)ドイツ
   風力等の再生エネルギーの電力シェアは、20%を超えているが、天候頼みのため不安定で、安定確保の設備費用拡大で、電気料金は上昇傾向にある。

(3)アメリカ
   後に破綻した「エンロン」が価格つり上げを狙い、電力を売り渋った。その後、2000年~2001年にかけて、大規模な停電(需要拡大にもかかわらず、設備投資しなかった)が発生し、多くの州が自由化の計画を撤回した。

「三井戦略研究所」のレポートによれば、家庭向け電気料金のうち非自由化37州と自由化13州の平均で比較すると非自由化37州は、11.7セント/kWh、自由化13州は、13.6セント/kWhと非自由化州の方が安い。
また、2001年~2013年の電気料金は上昇しており、電気代が」下がった州は、一つも無い」 
資料2「米国の電力自由化の現状」P6参照

(4)上述したような世界の同行に踏まえて、今後の日本における電気事業を見た場合、電気料金の引下げで発電事業は、利益がでないとか少ないとかで、3年前後で撤退する小売電気事業者が続出する可能性があります。他方、電気料金が下がるのも数年で終わり、反転上昇する可能性があります。ちなみに、家庭用規模の一般契約の料金は4年間は維持される。言い換えれば、4年後は、許認可ではないので自由に値上げできることになります。

3、電力会社の選択とリスク

(1)新電力5位の「日本ロジスティック協同組合」が破産した。日本ロジスティックは、2015年3月の売上が556億円になっていた。しかし、自社電源がなかったなかで、発電事業を開始、144億円が重荷になって資金繰りが悪化したと言われている。日本ロジスティックと契約していた需要家は、平成28年4月1日から他の電力会社への契約切替にアタフタした。又、日本ロジスティックに電力を販売していた千葉市等は、約1億円未回収になり、裁判になる見込みです。(その他川崎市等の地方公共団体あり)
電力事業は儲かると思っている方がおられると思いますが、2000年から特別高圧等の大口から自由化になっていますが、赤字経営を理由として、超大手企業が数社電力事業から既に撤退しているが、一般には公開されていない。大口の場合でも、東京電力供給に戻したが、前の安い契約には加入できなかった事例は多い。
他方、一般電気事業者は、大規模リストラを実施し、燃料費の減少も追い風となり、平成27年度の単独決算で3,275億円の経常利益(東京電力ホールディングス)がある。新電力大手が事業撤退するなかで、一般電気事業者の経営が成り立っている理由は、所有している発電設備が高効率であることと、燃料を大量に輸入・備蓄していることに起因している。言い換えれば、高効率発電所を所有せず、大量に燃料輸していない新電力の会社は、競争激化の場合、事業撤退するのは、目に見えています。(現在は原油安) 参考として、東京電力の火力発電所の熱効率の資料を参照致します。
なお、ガスエンジンの発電効率(非コンバインドサイクル)は、35%~41%程度です。
資料3参照、東京ガス系の発電会社も発電効率(非コンバインドサイクル)が高い。

(2)電気料金の契約内容は、秘密保持になっています。
公共料金の場合、公平性が契約上確保されますが、自由化なので相対契約になります。相対契約なので、電力供給者は、電気需給契約者に「守秘義務」を課しています。一般電気事業者も新電力も同様でした。低圧の際は、個人が多いためそのようにならないかもしれません。

(3)スマートメーターの普及と効果
 スマートメーターは、どういうメーターなの?何か変わるの?遠隔操作が可能になり、アンペア容量の変更や電力供給停止が立会なしで可能になります。他方、消費電力の日負荷曲線が把握できるため、省エネ等の改善がやり易くなり、家庭内の電気設備の状況把握や制御ができるようになると言われています。(HEMS)

4、新電力(PPS=特定規模電気事業者)に切り替えるメリット・デメリット
電気料金が安くなるからと言って、むやみに切り替えるのはリスクがあります。安くなるという基準だけではなく、電力供給会社の経営状況や発電設備や燃料備蓄体制の有無をした方が無難です。また、現在一般電気事業者で選択約款や付帯契約(電化・深夜電力)  している場合、新電力にはそのような契約がないので料金比較が難解なので注意が必す。また、一般電気事業者は、新電力から再度、一般電気事業者(東京電力等)に戻る場の契約に戻れない場合があり、十分な検討が必要です。  

新電力に電力供給者を切り替えた場合のメリット・デメリットは、知られていませんので別紙の「資料5」「資料6」「資料7」にて、詳しく説明致します。

 電力自由化とは、競争原理が働く面がある(安価な電気代のメリット)。他方、企業の収益論理で公共性・公平性・供給安定性が失われる面(デメリット)が現出してくるだろうと予想されます。必ずしも良い面だけではないことを認識しておく必要があります。
 特に法人の場合、これまでの一般電気事業者(東京電力等)以外の場合には、電気需給契約が異なってくるので、契約締結前に十分その内容の精査・検討が必要になります。詳細はここでは省略致します。   

5、ガスの自由化と一般電気事業者の反転攻勢

(1)ガスの自由化の概況と平成28年4月からの家庭用規模のガス自由化
   資料8「ガス事業の現状と課題」(資源エネルギー庁資料)。P3、P6(10年間の電気・ガス自由化における新規参入者の状況)
(2)これまでのガス新規参入者
   資料9 「ガス新規参入者事例」h27.3を参照、「ガス事業の現状」参照
(3)東京電力と東京ガスの競争が、本格的に激しくなる。東京ガスのガスを東京電力が奪う反転攻勢の開始が、いよいよ始まる。(平成29年4月1日~)
   東京電力は、これまでガスの熱量調整(LNGに少量LPガス混合させ、熱量を45MJ/m3に調整)を委託していたが、取りやめ、自前で生産する設備を整える。そして、大口顧客向けに現在130万トン(LNG換算)1200億円の売り上げを、2023年までに家庭用を含め100万トン増やす計画になっています。要するに電力をガス会社系や石油系に奪われた分をガス販売の増加で収入を補うということです。
(4)ガス会社よりも、大量に安く購入しているのは電力会社
 ①世界の天然ガスの輸入ランキングは、日本世界一
 ②世界の石油の輸入ランキングは、日本世界三位
 ③会社別LNGの輸入ランキングは、東京電力は日本一
   二番目が、中部電力・東京電力 
(5)日本瓦斯は、東京ガスから東京電力にガス卸供給会社を変更した。
 東京電力は、京葉ガスや大多喜ガスにも卸売り拡大を考えている。また、東京電力は、中部電力と燃料調整事業の統合をする予定である。電気・ガスの自由化の進展に伴い、弱小都市ガス会社の縮小は必至であり、ガス会社の方が、危機意識が強くなってきています。
 
6、将来予想される中小新電力の消滅と電力会社とガス会社の動向

(1)電力・ガスのピーク需要期と相互供給メリット
    原子力発電の停止(九州除く)が続く中、天然ガス(化石燃料)の比率が上昇しています。電力会社とガス会社のピークが夏季と冬季と逆になっているため東京ガスと関西電力の燃料の融通での相互メリットをはかる契約を開始しています。
(2)電力会社とガス会社の競争と中小会社の縮小・消滅
    日本瓦斯グループは、東京ガスから都市ガスを調達してきたが、東京電力から調達(30万件分の卸供給)することになった。東京ガスは、関東近辺のガス事業者との電力販売の提携を推進してきていたが、ガス事業者に与えた影響は大きい。
(3)電気料金の値上げと電力・ガス会社寡占化の進 
 展
    将来的には、大手電力会社と大手ガス会社の寡占化が進み、中小零細の発電事業者は、市場から撤退を余儀なくされる可能性が高い。原子力発電が許されないなかでは、電力会社の燃料はCO2排出量の低減をはかるため天然瓦斯が主流となり、ガス会社との燃料の相互融通が無駄な設備投資の減少になり、競争⇒寡占化から一転して、将来、合併吸収=再び独占という構図もありえると思います。


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