活動報告

第17回例会卓話「川崎のベンチャー企業支援のご紹介」

2016年11月04日

「川崎のベンチャー企業支援のご紹介」
 ~「川崎モデル」から「新川崎モデル」への発展~
 
 有限責任監査法人トーマツ 鳥山秀弘様




私は製造業、システム開発、コンサルティング会社を経て2013年に中小企業診断士となりました。その後、有限責任監査法人トーマツ 横浜事務所に入所し、コンサルティング業務に従事しています。近年は、神奈川県、横浜市、川崎市等の自治体と協力しながらベンチャー企業を支援する業務が増えてきております。本日は、ベンチャー企業支援におけるモデルケースとなる「川崎モデル」を中心に、川崎のベンチャー企業支援をご紹介いたします。
【川崎モデルのご紹介】
一般的な「川崎モデル」の定義は以下の通りです。
『神奈川県川崎市が、地域産業活性化を目指し、大企業・研究機関が保有する開放特許等の知的財産を中小企業に紹介し、中小企業の製品開発や技術力の高度化、高付加価値化を支援するため行っている事業』
上記の定義は「川崎モデル」の一部しか表現できていないと感じています。私が考える、川崎モデルの特徴を以下にまとめます。

 ①以下の活動団体が連携すること
川崎市役所、公益財団法人 川崎市産業振興財団、川崎市商工会議所、金融機関
 ②担当者が考え実践すること
 支援する人々が企業のことをよく知っている
担当者一人ひとりが企業のために何をなすべきかを考え、実践する
一人の担当者がリードして動くのではなく、多くの人を支援の渦に巻き込んでいく
 ③3つのキーワードに代表される手厚い支援
密着、おせっかい、キャラバン隊

これらの特徴を持つ川崎モデルの支援フローは下記の通りです。
 ①元気な企業を発掘する
企業へアンケートを行い、回答内容によって支援対象企業の目星をつける
経営者のブログなどSNSをチェックし、人となりをした調査する
企業経営者との勉強会などで口コミを収集する
金融機関から良い企業を紹介してもらう  などなど
 ②支援対象企業の強みを見つける
市役所職員、財団のコーディネーター、金融機関など大人数のキャラバンで企業を訪問
企業の現状を把握すると共に潜在力や可能性を検分
 ③その強みを見える化する
各種の認定制度への応募
各種の受賞イベントへの応募
認定、受賞した後のメディアへの露出支援
 ④オープンイノベーション
大学との知財交流、共同研究、学生のインターンシップ
異業種企業とのコラボレーション
住民との交流
地域金融機関のショールーム活用





これまでたくさんの成果を挙げてきた「川崎モデル」は2014年の社会起業大学主催 『ソーシャルビジネスグランプリ』において、政治起業家部門グランプリを受賞しました。では、なぜこのような活動が実現できたのでしょうか。
私は「川崎モデル」の成功要因は以下の3点にあると考えています。
①立地条件が整っている
川崎市は人口約140万人、面積142.7km²の政令指定都市であり、人口密度、企業の集密度が高い。行政が施策を打ちやすい。
企業のほか、大学や研究機関も多い。連携のネタが豊富
②人材交流が活発
市役所職員、財団のコーディネーター、金融機関などの機関同士で、出向や異動が頻繁
③長期的な視点に基づいた活動
市役所の職員の方々は、予算消化などを目的にせず、長期的な視野にたって行動
職員への評価制度
市議会・市長との連携

【かわさき起業家オーディションの紹介】
 年に6回、2カ月おきに実施される「かわさき起業家オーディション」は、「川崎モデル」における「強みを見える化する」場としても重要な役割を果たしています。





2016年3月に100回記念大会が開催されました。
 「かわさき起業家オーディション」の特徴は、単なるプレゼンの場ではないということです。
●審査は2段階
書類審査の1次審査、面接による二次審査で、企業の強みやビジネスモデルを評価
●応募者には担当マネージャーが手厚くフォロー
応募した段階で担当マネージャーがつく
今後に向けた改善をアドバイス
同じ起業家が何度もチャレンジできる
●大賞受賞者には融資の特典が用意される。

過去の受賞企業の中には「ロイヤルブルーティージャパン」のように、このオーディションをきっかけにしてビジネスアイデアを形にして大きく羽ばたいた企業も産まれています。



【「かわさき基準(KIS)」のご紹介】



かわさき基準(KIS)とは、福祉製品のあり方を定めた基準であり、下記の理念に基づいています。

かわさき基準とは、利用者にとって最適な福祉製品のあり方を示した、独自の基準であり、自立支援を中心概念としています。ここでいう自立とは、すべてを自分でできることを意味するのではなく、「自らが望む」、「主体的に選択、自己決定できる」ことであり、家族や地域が協力することも含めて実行、実現できることを指します。
かわさき基準における理念は、福祉先進国であるスウェーデンにおける福祉の基本方針、理念を参考としつつ、我が国の「介護保険における理念」も包含しながら我が国の現状を踏まえ、「8つの理念」として整理され、それぞれ下表のとおりとなっています。スウェーデンにおける福祉の基本方針、理念を参考とした理由は、社会的自立の支援を基本コンセプトとし、高齢者や障害者自身が社会に貢献できることを目指した包括的な理念としているからです。



例えば、かわさき基準(KIS)の認定製品として、ユニバーサルサウンドデザイン社のコミューンという製品があります。



これは、日常生活の「聴こえ」に関する不便をスマートにおしゃれに解決することで、世の中のコミュニケーションを良くしていくという製品です。



【「ベンチャー企業等成長促進支援事業」のご紹介】
今年度、川崎市は「ベンチャー企業等成長促進支援事業」を立ち上げました。トーマツベンチャーサポート株式会社が関わりを持っております。



2016/8に支援先企業3社が決定し、9月よりサポートを開始しました。



ニコドライブは車椅子生活者等、足に障害を持つ方が手で車を運転するためのハンドコントローラーを製造・販売している会社です。



社長に「企業の使命」をお伺いしたところ、「企業が存在し価値を提供し続けること」との回答がありました。
企業が存在するためには、売上数値を求めるだけではなく、顧客ロイヤリティ指標であるNet Promoter Score(NPS)の向上を図ることが必要であるという仮説の元、顧客ロイヤリティを向上させるための活動を始めたところです。



現在、ニコドライブでは「カスタマージャーニーマップ」を作成し、顧客の振る舞いを顧客の視点で想像し、洗い出しています。その結果、以下のような気づきが得られました。
●製品の価値は何か
●いつどこで必要となるのか
●いつ、どのような情報が必要となるのか



NPSの向上は他の企業でも昨今注目されているテーマです。
例えば、当社の他社事例としては、B2Bの製品販売の会社において、今まで注目していなかった「販売先が顧客に行っている活動」に着目にし、販売先への関わりを見直すという活動に取り組んでいます。これによって販売先は、当社の製品を扱うことで自社にもたらす利益を増大することができ、結果的に当社の売上向上にも寄与するという動きに繋がっています。

以上、「川崎モデル」のご紹介を中心にして、川崎のベンチャー企業支援についてご紹介いたしました。
川崎市は、今までの「川崎モデル」で培ったノウハウをベースにして、更なるベンチャー企業支援のために、手厚いサポートを実施し、「新川崎モデル」として発展させているという現状をご理解いただければうれしく思います。

ベンチャー支援や顧客ロイヤリティの向上にご興味・ご関心をお持ちの方がいらっしゃいましたら、是非ご連絡ください。

有限責任監査法人トーマツ 横浜事務所
トーマツベンチャーサポート株式会社 横浜事務所
中村秀剛(なかむら ひでのり)
hidenori.nakamura@tohmatsu.co.jp



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