活動報告

第28回例会卓話「神奈川の森林・林業」

2017年02月03日

「神奈川の森林・林業」

~木材利用と地球温暖化防止~
神奈川県森林組合連合会代表理事専務 服部俊明様



◇自己紹介
 昭和49年に大学を卒業後、神奈川県に入庁し、技術職として森林・林業、木材加工・流通行政に携わってきました。平成23年に退職、その後、神奈川県森林組合連合会に再就職し、現在に至っています。


1 日本の森林面積と森林蓄積の推移
日本の国土面積の約66%が森林(約2,500万ha)です。過去40年間森林面積の増減はほとんどありませんが、木の成長により森林の蓄積量は年々増加し、40年間で2.6倍に増え、49億㎥となっています。特に、人工林は5.5倍に増え約30億㎥、1年あたりの蓄積量が8,610万㎥(100m四方のグラウンドに、木材を敷き詰めた場合、富士山の約2.3倍の高さになる量です。)となっています。一方、使われている国産木材の量は、約2,140万㎥(平成26年)ですので、このままでは、蓄積量は増え続けていくことになります。



2 森林の有する多面的機能
森林は、木材を生産する場だけでなく土砂災害の防止や水源涵養など様々な働きを通じて国民生活の向上と国民経済の健全な発展に寄与しています。特に現在、温室効果ガスによる地球温暖化が深刻な問題となっていますが、森林は大気中の二酸化炭素を成長の過程で取り込み、木の幹や枝に炭素を貯蔵することで、地球温暖化の防止に貢献しています。

3 木材利用の意義
国産材が利用され、その収益が林業生産活動に還元されることよって、伐採後も植栽等を行うことが可能となり、「植える→育てる→(二酸化炭素を吸収)→使う」というサイクルが維持されます。これによって、森林の整備・保全を続けながら、木材を再生することが可能となり、森林の有する多面的な機能を持続的に発揮させることができます。
また、国産材が木材加工・流通を経て住宅などの様々な分野で利用されることで、木材産業を含めた国内産業の振興と山村地域の活性化が図られます。
空気中の二酸化炭素を炭素の形で貯蔵している木材を、住宅や家具等に利用することは、大気中の二酸化炭素を長く閉じ込めておくことになり、二酸化炭素の低減につながることになります。
  さらに、木材は、鉄やコンクリート等の資材に比べて製造や加工に要するエネルギーが少ないことから、木材の利用は、製造及び加工の過程で生じる二酸化炭素の排出削減につながることにもなります。



4 木材の自給率
平成26年の我が国の国産材の供給量は、2,149万㎥で木材自給率は、31.2%となっています。
高度経済成長の下で木材需要は拡大し続けましたが、昭和39年の丸太輸入の完全自由化により、自給率は下がり外国産材がその大半を占めるようになりました。こうしたことにより国産産材の供給は減少し、山村の過疎化や高齢化もともない、林業生産活動は低迷していき、手入れの行き届かない、荒廃した森林が全国に広がっていきました。
平成14年には、木材自給率は18.8%と最も低い数字となりましたが、近年、人工林の森林資源の充実や合板原料としてのスギやカラマツ等の国産材の利用増を背景に国内生産量は増加傾向にあり、一方で木材の輸入量は減少傾向のため、木材自給率は上昇傾向にあります。
さらに、平成24年7月に再生可能エネルギーの固定買取制度が開始され、木質バイオマス発電施設の稼働が本格化したことにより、燃料として利用された間伐材等の木質バイオマス量は、平成24年では81万㎥であったものが、平成26年には168万㎥とわずか2年で倍増しています。
木材のエネルギー利用は、化石燃料と異なり大気中の二酸化炭素濃度に影響を与えない、カーボンニュートラルな特性を有しています。森林整備により発生する山に放置されたままの未利用間伐材等を化石燃料の代わりに利用すれば、化石燃料の燃焼による二酸化炭素の排出を抑制することができます。
※カーボンニュートラルとは、例えば、木材を燃料として燃焼させると二酸化炭素が排出されますが、その二酸化炭素は、もともと木が成長する過程で吸収したものであることから、排出される量と吸収される二酸化炭素の量は同じということになります。こうした状態のことをカーボンニュートラルであると表現しています。

5 木材利用
木材は、曲がりの具合によってA材、B材、C材に区分され、A材はまっすぐな材で主に製材用(柱・梁など)として、やや曲がりあるB材は主に合板用材や集成材用(ラミナ-材)として、C材は主にチップ用(紙の原料や燃料用)として利用されています。

6 木材需給量
木材需要は、製材用、合板用、パルプ・チップ用とも昭和35年から急増し、昭和48年には、木材需要量は過去最高の1億1,758万㎥(丸太換算)が使われ、昭和35年の2.1倍に達しました。その後は、減少と増加を繰り返し、平成8年の時点では、1億1,250万㎥となりました。その後は、減少傾向で推移し、平成21年には、6,321万㎥となり、昭和38年以来、46年ぶりに7,000㎥を下回りました。
このため、国産材の供給量は減少し、製材用材及び合板用材の供給量も平成14年度にはピーク時の3割に相当する1,608㎥まで低下しました。そして、同年を底に、製材用材及び合板用材は、外材にあっては、総じて減少傾向にあるものの、国産材の製材用材は緩やかな増加傾向に転じ、合板用材は急激な伸びとなり、平成8年度23万㎥の供給量であったものが、平成25年度には326㎥となりました。
※ロシアが合板用の針葉樹材に対して輸出関税の引き上げを行ったことから、合板用の国産材の針葉樹(カラマツ、スギ、ヒノキ) の需要が急激に伸びました。
このように、合板に国産材が大量に使われるようになったことから、これまで、国産材の丸太の用途が主に製材とチップ用であったものが、合板用としての新たな販売先が出来、販売価格も、製材用材とチップ用材との中間に位置する価格で取引されるようになりました。
※神奈川県の丸太を石川県の七尾市にある合板工場へ主としてヒノキ材を持ち込み、製品となった構造用合板を全量買い取り、神奈川県内で「丹沢・箱根ヒノキ合板」として販売されています。



7 木材価格の推移
スギやヒノキの国産材の丸太価格は、昭和55年年をピークに長期的な下落傾向にありましたが、平成21年以降はほぼ横ばいで推移しています。
昭和55年のヒノキの中丸太は76,400円、スギは、39,600円であったものが、平成27年には、17,600円、12,700円と大きく落ち込んでいます。一方労働賃金や資材は値上がりしており、これでは林業は成り立たないというのが現状です。

8 新たな製品・技術の開発・普及
国産材丸太の需要を拡大し、新しい技術により付加価値を付けて販売していこうという動きが出てきています。
(1) CLT(Cross Laminated Timber 直交集成板)
一定の寸法に加工されたひき板(ラミナ)を繊維方向が直交するように積層接着したもので、面材として主として壁などに用いられています。これまで、個々の建築物ごとに、基準強度等を設計し、国土交通大臣の認可を必要としましたが、平成28年4月から建築基準強度や一般的な設計法が告示されたことにより、CLTの一般利用が始まり、高層ビルの建築も可能になりました。国では、今後実証的建築を積み重ね施工のノウハウの蓄積に取り組んでいくこととしています。

(2) 木質耐火部材の開発
「建築基準法」では、大規模な建築物や不特定多数の人が利用する建築物にあっては、耐火建築物や準耐火建築物にしなければならないと定められています。そこで、木材を石膏ボードで被覆したものや木材を不燃処理木材で被覆したもの、鉄骨を木材で被覆したものなどが開発され、実用化されています。平成25年には、2時間の耐火性能を有する耐火集成材が開発され、最上階から数えて14階まで木造で建築することが可能となりました。

(3) セルロースナノファイバー
植物から作られるセルロースナノファイバーは、環境負荷が少ないうえ、強さは鉄の5倍、重さは鉄の1/5といった特性を備えています。森林資源の豊富な日本にとって原料調達が容易というメリットもあり、幅広い分野での利用が期待されています。
セルロースナノファイバーは、木を細かく切削して木材チップとし、さらに繊維を取り出してパルプにします。このバルプから紙を製造していたわけですが、さらに束になっている木材繊維を科学的・機械的に解きほぐすことにより、繊維1本の直径が数ナノから数十ナノメートル(1ナノは10億分の1メートル)の物質を作り出すことができます。
強度があって、軽量、しかも透明で、熱を加えても膨張しにくいほか、化粧品などに加えると粘りを出すこともできることから様々な利用法が考えられています。中でも樹脂などに混ぜて自動車部品に使えば、強くて軽い自動車が作れることになります。実用化に向けた製造・技術開発が進められています。



9 まとめ
森林の整備によって発生する間伐材等の多くは未利用のまま山に放置されています。カーボンニュートラルである木材を木質バイオマス発電などの燃料としての利用が促進され、また、新たな技術開発によりさらに多くの木材が利用されれば、山側において森林資源の循環が維持され、林材業はもとより新たな産業と雇用が創設されます。このことが、大気中の二酸化炭素の低減につながり、地球温暖化防止にも貢献することになります。
身近なところから木材を使っていただければと思います。御清聴ありがとうございました。



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