活動報告

第39回例会卓話「母子の健康月間に因んで」

2017年04月28日

「母子の健康月間に因んで」
 明石敏男会員

今月は「母子の健康月間」ということで、小原プログラム委員長から母子の健康について話すようにと指示をいただきました。
 何を話そうか、と考えていたのですが、今月のロータリーの友に産婦人科医の対馬ルリ子氏が寄稿されています。
 全体的な話はもうお読みになっていることと思いますが、「ロータリー財団は、ロータリアンが以下の形で、母子の健康を改善するのを支援します」として、
 1 5歳未満の幼児の死亡率と罹患率の削減
 2 妊婦の死亡率と罹患率の削減
 3 より多くの母子に対する基本的な医療サービスの
   提供、地域社会の医療/保健関係のリーダーと医
療提供者を対象とした母子の健康に関する研修
 4 母子の健康に関連した仕事で活躍していくことを
目指す専門職業人のための奨学金の支援
の四つを提言しています。
 そのあと、いろいろなことを書かれているので、それに加えて同じようなことを話しても仕方が無いので、詳しくはロータリーの友を読んでいただくとして、今日は産科医の立場から母子の健康について考えてみます。
 出生について
 我が国の出生数は減少の一途をたどっており、昨年の出生数は100万を割り込んでしまっています。 出生率も減少していて、合計特殊出生率もやっと下げ止まったかのようですが、このままでは日本の人口はどんどん減っていくのは止めようがない流れとなっています。
 原因としてはいろいろありますが、女性の社会進出に伴って結婚する時期がおそくなったこと、その結果妊娠、出産する時期が遅くなり、出産する児の数が減ったこと、
教育などの費用がかかるため多数の子供を持てないこと、さらに、結婚しない女性が増えたことなどが大きな要因となっています。
 結婚年齢は上昇の一途をたどっていて、結婚しない人間も増えてきており、結果的に出生数が減っています。 現在では女性でも30歳過ぎで未婚の人は多く、35歳すぎてから結婚する人もかなり多くいます。男性では30歳前に結婚する方が少ないような状態です。
 生涯未婚率もどんどん上昇しています。
 結婚年齢が上がれば、出産年齢も上昇してきます。
 私が医師になった頃は、24歳に出産のピークがありましたが、年々上昇してきています。当時は30歳を超えると高年出産といわれ、○高マークがカルテについていました。40歳すぎだと、普通分娩は危険が高いということで、それだけで帝王切開することもあまり抵抗なく行われていました。その後、出産年齢がどんどん高くなってきたので35歳以上を高年出産とするようになりました。現在では1/3が35歳以上の出産です。
 年齢が上昇するに従って、妊娠しにくくなったり、妊娠しても流産になったり、児の異常も増えてきます。これは、卵子の異常が増えるためです。
 人間の体は細胞からできています。普通の細胞は、古い細胞は死んで、新しい細胞ができて置き換わっていきますが、卵子は、生まれてくるときに持っているものがそのまま置き換わることないので、その女性と同じ年齢の細胞なのです。 従って、年齢とともに卵子は古くなっていくので妊娠しにくくなったり、妊娠しても異常な経過になっていくことが多いのです。
 不妊症の治療として、対外受精などの生殖補助医療が最近増えており、2015年には日本で生まれた児の23.6人に一人は生殖補助医療で生まれています。
 現在、35歳くらいで結婚しても、まだしばらくは子供を作りたくない、と言って40歳近くなってから妊娠しようと思ってもなかなか妊娠できず、不妊で医療機関を受診する女性が多くいます。
 しかし、今お話ししたように年齢が上昇するに従って妊娠しにくくなります。国も以前は生殖補助医療の補助をしていましたが、現在は体外受精の年齢制限をもうけています。2016年からは43歳以上には補助されなくなりました。 これは、年齢とともに妊娠、出産率が極端に低下するため、国も補助するのが無駄になる、ということで補助しなくなったものです。
 しかし、学校で性教育がしっかり行われていないため、このことを認識していない女性が多く、40歳過ぎて不妊で初めて産婦人科を訪れて、話を聞いて愕然とする女性が後を絶ちません。
 また、年齢とともに妊娠、出産時の母体の異常も増えてきます。
 やはり生物としての人間の出産適齢期は20歳から30歳まで、せいぜい35歳までだと思います。
 さて、出産が減っていますが、カップルの希望する子供の数は1970年代から現在まで2.5人程度であまり変化はなく、また実際の現存子供数は1.7人程度、追加希望子供数は0.3人程度で変化していません。
 実際、私のクリニックでも、分娩する女性をみていると、2人目、3人目の分娩が多く、合計特殊出生率が低いのは分娩しない女性が増えているためと思われます。
 児の出生体重は年々低下していますが、これは低出生体重児の増加も影響しています。
 「低出生体重児」というのは、生まれたときの体重が2500g未満の児のことで、生まれた時期はいつでもかまいません。「未熟児」というのは分娩予定日の3週間前より早く生まれた児、すなわち早産で生まれた児のことです。ちなみに、正期産というのは予定日の3週間前から予定日のあと2週間までの5週間の間に分娩になった場合で、それより早く生まれると早産、それより後で生まれると予定日超過といい、この5週間の間が、予定日頃、という扱いになります。
 新生児医療の進歩により、昔であれば育たないとされていた未熟児や低出生体重児もかなりの割合で育つことができるようになり、このため、かなり早い時期でも児や母体の安全を図るためにあえて児を娩出させることも増えています。 このため、低出生体重児が増えて全体の出生体重を引き下げている面もあると思われます。
 国も母子の健康に関していろいろな施策を行っています。
 妊婦健診は国の指針により自治体が補助をしているので、自治体によって補助額が違いますが、健診回数は平均で14回ということで14回の補助券が出されています。
 最近、児童虐待の原因として、望まない妊娠で生まれた児や、妊娠中からの児に対する母親の不安、育児不安などが問題視されています。
 産後は精神状態が不安定になることが多く、マタニティーブルーや産後うつ病になる産婦も多く、妊娠中から産後早い時期にかけての母児に対する支援が必要と言われています。 国もその支援をするようにということで都道府県に指示を出しています。
 横浜市でも市が支援体制を作ろうとしていて、すでに産後母子ケア事業として、妊娠中から、または産後に精神的、肉体的な不安をかかえている産婦を、デイケア、または宿泊してのケアを行うようになっていますが、実施にあたってはいろいろな問題があり、まだ確立されてはいません。 さらに、妊婦健診の補助券はすでに実施されていますが、産後の精神的な問題を早期に把握するための産後健診の補助券制度も今年度から実施することになり、細部を現在産婦人科医会、医師会と横浜市で詰めているところです。


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