活動報告

第26回例会卓話「獣医学と獣医師の役割」

2018年02月02日

「獣医学と獣医師の役割」
東京大学大学院農学生命科学研究科獣医学専攻 桑原正貴様





講演の機会を与えて頂き有難うございました。この一年にわたる獣医学部新設をめぐる議論の中で、これほど獣医が世間的に注目されたことはなかったと思います。獣医学教育の現場に身を置く一員として、獣医学と獣医師の役割に関してその現状と課題をお話しさせて頂きました。





 我が国におきましては、約40,000人が獣医師として免許を保有しています。その内の約4割の獣医師が小動物診療、所謂ペットである犬や猫の獣医師として働いています。それ以外にも獣医師の活動分野は広く、牛、豚、鶏および馬などの診療を行っている産業動物獣医師、家畜伝染病の防疫、食品等の安全確保、食品衛生監視・指導、狂犬病等の予防について行政に携わる公務員獣医師、動物や人の医薬品開発や海外技術協力に従事する獣医師もいます。そして、その職域や地域の偏在化が問題視されていることも否めません。
公務員獣医師の具体的な職場として、家畜の飼養管理に関連した動物衛生の確保には家畜保健衛生所が、食肉の衛生確保には食肉検査所が、そして保健所も健康や衛生の確保のために設置されており、これらの機関で合計約8,000人の獣医師が活躍しており、国民の健康や食品の安全・安心のために貢献しています。
 全国には獣医学部や獣医学科を有する大学が、これまでには16校が存在しています。その内訳は、国立大学(北海道大学、帯広畜産大学、岩手大学、東京大学、東京農工大学、岐阜大学、山口大学、鳥取大学、宮崎大学、鹿児島大学)が10校、公立大学(大阪府立大学)が1校、私立大学(酪農学園大学、北里大学、日本獣医生命科学大学、麻布大学、日本大学)が5校です。そして、この4月から岡山理科大学に獣医学部が新設され開校する予定です。新卒、既卒を合わせて、毎年千数百名が獣医師国家試験を受験し約千名が合格しています。この10年間の卒業生の進路をみてみると、小動物診療分野が減少傾向にあるのに対して公務員や産業動物診療分野で増加する傾向にあります。国としても獣医療体制の整備に向けた基本方針として、産業動物獣医師の確保、獣医師の技術の高位平準化、家畜伝染病に対する危機管理体制の強化等を公表し、都道府県との連携を含めて地域の実情に応じた獣医療の促進を図っているところです。また、卒業生の半数以上が女子学生であることから、女性獣医師への就業支援対策も進められています。
 生態系の保全も含めた永続的な地球における生命の営みの達成には、人、動物、そして環境の健康が相まって可能になるというOne Healthの概念が提唱されていることから、獣医学の包含する広範な領域での取り組みが益々重要性を増すものと思われます。


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