活動報告

第43回例会卓話「戸山流抜刀術と日本刀」

2018年06月15日

「戸山流抜刀術と日本刀」
       戸山流抜刀術 竹内義順様


 この度は、横浜東ロータリークラブでお話が出来る機会をいただきありがとうございます。本日は実際に刀使いながら話を進めていきたいと思います。
「四方払いの儀」
これは流派によりやり方は様々ですが、神前においての神楽舞が原型だと言われております。広い意味では、東西南北。青竜・白虎・朱雀・玄武。或いは持国天・広目天・増長天・多聞天。これらの神仏のご加護を頂戴しながら、四方に仇なす邪神・悪鬼・厄・疫病を打ち払い、五穀豊穣、天下泰平を祈願するというものです。これはよく、おめでたい席で行われるもので新年の稽古始めや道場開き、武道の大会、或いは結婚式や建前などで行われております。本日はこの場を一層神聖な場所とし、本日お集まりの皆様の行く道の障害となるものを打ち払い、祈願成就を合わせて祈念いたしまして「四方払いの儀」を執り行わせていただきます。
「戸山流について」
戸山流とはどのような流派かと申しますと、大東亜戦争の敗戦により廃校となった陸軍戸山学校で編み出されたものです。大日本帝国陸軍が小冊子「軍刀の操法及試斬」として全陸軍将校に配布したものを、戦後伝えていこうとする動きが各地で起こり広まった流派です。
明治維新が起こり、今の新宿区の戸山公園のある場所に陸軍の兵学寮が建ち、そこが明治6年に戸山学校となりました。戸山学校では戦闘技術や武道、軍楽隊などを主に教えていました。全国の各部隊から学術や体育の成績優秀な将校や下士官を集め、射撃や体操、軍刀の操法や戦闘技術を習得させ、各部隊に戻り指導することにより戦力の向上を図ることが目的の一つとされていました。ここでの修練はトイレで座って用を足すのが辛いほどの厳しさだったと、実際に体験した恩師から聞いています。
この戸山学校での軍刀の操法は、明治初期から終戦までの間に様々な改良がなされてきました。当初はフランス陸軍の将校から白兵戦術を学んでいたため、軍刀も幕末までの諸手で握る方法から、サーベルと同じく片手での操法へと変わりました。その後、日清・日露戦争を経験し、大正時代に入り白兵戦が重要視されるようになったこともあり、日本刀に対する信頼性が高まりました。そして軍刀の保持方法も片手保持から諸手保持に変わっていきます。サーベル調より古来の日本刀の形の方が、より日本人の精神的な拠り所にもなっていたようです。
そして戸山学校では、日本古来の剣術の中から新たな軍刀の操法を制定するため、中山博道先生らの剣術家や当時の名だたる武道家を招聘して実践的な立ち技刀法の研究を行い、5本の形を制定しました。昭和に入り大日本帝国陸軍として、正式に軍刀もサーベル様式から太刀形に変わりました。そして戸山学校では、軍刀の操法について技の追加と改定を行い7本の立ち技を制定し、小冊子「軍刀の操法及試斬」を作成。正式に大日本帝国陸軍として全陸軍将校に配布される運びとなります。謂わば戸山流は、各流派の良いとこ取りをして実戦で役立ちそうに改良した、戸山学校での軍刀の操法がもとになっています。
「恩師 中村泰三郎先生について」
中村泰三郎先生は戦後、抜刀道と名付け、畳表を丸めて濡らしたものを仮想的に見立てて、試し斬りを体験しながら心身を鍛錬するという武道としての稽古方法を確立した、抜刀道の生みの親と言われている先生です。
先生は昭和7年に山形歩兵32連隊に入隊。初年兵でありながら将校・下士官の剣術指導にあたり、14年に陸軍戸山学校にて剣道と銃剣道の特別指導を受ける。大東亜戦争中は関東軍に属し、第二次山下兵団南方斬込隊実戦武道特別教官として部隊の指導に当たります。そして在籍する部隊が翌日玉砕という時に、教官であったため一人だけ後方部隊への異動を命ぜられ九死に一生を得るという体験を三度繰り返し、最後は沖縄戦に続き本土決戦が予想されるため福岡にて民間義勇隊に巡回剣術教官として刀法と竹槍を指導していた時に終戦となりました。剣によって生きながらえた先生は、剣こそ、戸山流こそ命の恩人と感じ、剣の修行と戸山流を後世に広めることに残りの人生を捧げてこられました。
そして先生は満州事変・日中戦争・大東亜戦争の戦地での実際の体験から、中村流抜刀道を考案されました。
「おわりに」
私はこのような歴史の戸山流と中村流の抜刀道を学んでいます。まだ初心者の頃、実際に試し斬りの稽古をした時にほんの刹那的な瞬間ではありますが、無になる感覚とはこのようなものかと感動の体験をしたことを今でも鮮明に覚えています。それ以来、霊気が宿るといわれる日本刀の魅力と先人たちへの感謝、それに武道としての抜刀道の魅力に取りつかれて今日に至っております。そしてこの抜刀道を通じて様々な方々との出会いに恵まれたことは、私の大きな財産となっています。今後も心身を鍛え、出会いを大切に感謝を忘れず、武の道の人間として精進していこうと思います。
ご静聴ありがとうございました。


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