活動報告

第25回例会卓話「リハビリについて」

2019年01月21日

「リハビリについて」
理学療法士 東太田賢作様

リハビリテーションについてお話しさせていただきます。
 ここ近年「リハビリ」という言葉だけが先行し、本来の意味が崩れ、また誤解されたりなどして、薄れてきている印象があり、このままでは日本のリハビリテーションに対する考え方が諸外国と比べ、ギャップが大きくなっていく事を懸念しています。良く一般的に使われている「リハビリ」という言葉が、本来どういう意味なのか、どういう事を指すのか、を解説していきます。
 リハビリとは・・・単に運動をすることではありません。マッサージをして気持ちよくなることではありません。無理を押して体操をすることではありません。ノルマとして歩くことではありません。
 ぜひ!本来のリハビリに大きくかかわる、正しい運動をして、自分もそして自分に関わる周囲の人たちをも引きあげることで、役割をもった生きがいのある人生にしていきましょう。
「リハビリ」の意味を知っていますか?
語源はラテン語でリハビリの「リ」は「再び、リサイクル、リメイク、リターン」の「リ」と一緒です。ハビリスは「適した」という意味があり、現在では「再び適した状態になる事」また「本来あるべき状態への回復」という意味で解釈されるようになりました。
また、リハビリテーションの定義はWHOでこう定められています。
 リハビリテーションは、能力低下やその状態を改善し、障がい者の社会的統合を達成するためのあらゆる手段を含んでいる。リハビリテーションは、障がい者が環境に適応するための訓練を行うばかりでなく、障がい者の社会的統合を促す全体として環境や社会に手を加えることも目的とする。そして、障がい者自身・家族・そして彼らの住んでいる地域社会が、リハビリテーションに関するサービスの計画と実行に関わり合わなければならない。一番大事なところはここです。そして・・・地域社会がリハビリテーションと関わらなければならないと。これは、先程も冒頭で少し申し上げましたが、自分が良くなることで自分に関わる人達、そして地域社会そして日本が良くなることをしなければならない。という事が私のビジョンの基になっています。
広義のリハビリテーションは以下の通りです。
医学的観点
●維持的リハビリテーション
●予防的リハビリテーション
●機能回復型リハビリテーション
●スポーツリハビリテーション
社会的観点
●障がい者の社会参加(職業リハビリテーション)
●犯罪者社会復帰や更生
狭義のリハビリテーションは、その専門職である理学療法士または作業療法士による運動療法の事です。
 疾病や現病歴そして既往歴に至るまで把握します
 主訴(一番困っている事・痛いところ・できない事)を把握します
 服薬状況を把握します
 これらの情報を持って理学療法評価をします。理学療法士または作業療法士はこれができます。もちろん健康体の人の健康増進のための運動療法もしますが、メインは先程のリハビリの意味にもあったように、ご病気柄に沿って良くなるための手段を導き出すという事ができます。これを知らずに運動指導をすると、持病や主訴が悪化します。これはのちに詳しく述べます。なので、私共は治療をしているわけです。もちろん、医師の診断や指示の下で、ですが・・・。
では、なにが本当のリハビリなのかといいますとここでは3つに分けて説明します。
まず、やってはいけない運動です。間違った運動方法が指導されたりしています。決して少なくありません。
脳卒中の後遺症による片麻痺の方に、禁忌といっていいくらいです。ガンガンストレッチをしたり、指圧やマッサージをしたり、している話をよく聞きます。また、これが一番よくない!!一般的には、いいと思われているパワーリハですね。リハビリデイサービスと称してやっているところのほとんどがやっちゃってますね。なぜいけないかというと、片麻痺というご病気柄は、特に亜急性気から慢性期(ちょうど病院を退院するころ)はその障害の程度が落ち着いて来ると言われていますが、個人差もありますが実際はそうではありません。特に、筋緊張(キントーンとかキントーヌスとかも言ったりします)はその環境によって大きく変化します。そこへ、パワーリハをやってしまうと筋緊張がどんどん上がっていき、病院でリハビリをやっていた時は良かったんだけど、退院したら動きが悪くなって歩けなくなった、という話を本当によく聞きます。それは自己流でリハビリをやっていたか、パワーリハをしていたか、まったく何もやらなくなったかです。それほどパワーリハは良くありません。
あと、いわゆるO脚です。膝だけではなく股関節もこれに該当します。特に、このような大きな関節の変形や炎症があり、この診断を受けた方は、スクワットや正座は禁忌です。いずれも関節に大きな負担がかかりますので、避けましょう。ただし、O脚は、大腿四頭筋といわれる太ももの筋力低下と膝関節が完全に伸びきらなくなることで進行していきますので、筋力はつけないといけません。この場合は脚が地面についている状態ではなく、脚が宙に浮いている状態(例えば、座った状態)で重錘をつけたりなどして膝をしっかりとそるくらいの気持ちで伸ばすとついていきます。診断されなくとも、関節が痛い場合は控えた方が良いと思われます。
是非やってほしい運動療法です。
先程の脳卒中などの片麻痺の方は、片麻痺機能訓練 をします。これが、本当にやらなければならない運動療法です。専門的知識を持った理学療法士しかできません。また、歩行分析をしてこれを改善する方法をアドバイスします。これも理学療法士は専門職です。
腰部疼痛です。慢性の腰痛症は多くの患者さんが存在します。その種類は様々です。例えば、ぎっくり腰に代表される筋筋膜性腰痛や腰椎捻挫・脊柱管狭窄症・腰椎椎間板ヘルニア・腰椎椎間板変性症・変形性腰椎症・脊椎分離症・・・です。しかし、世の中では、腰部疼痛を一緒くたにして運動やストレッチングを指導しちゃっています。テレビや雑誌も然りです。これは、大変にまずいことです。それぞれの診断名に沿って運動療法はやり方が違います。例えば、ざっくりいうと脊柱管狭窄症は体幹を反ってはいけませんが、腰椎椎間板ヘルニアは反るこが推奨されます。また、腰痛には腹筋の筋力増強が有効とされますが、両脚をそろえて持ち上げる腹筋は禁忌です。
では、痛いところや持病を持った人は運動ができないかというと、そうではありません。
条件付きですが、やった方がいいことがあります。
例えば、慢性的に腰痛に悩んでいる人は、もちろん私たち理学療法士の『徒手療法』をお受けになった方がさらに良いですが、運動方法としては簡易的なコルセット(骨盤ベルト等)を装着して、ウォーキングをした方が良いでしょう。
また、慢性的に膝関節が痛い人などは、簡易的なサポーターをしてウォーキングをした方が良いでしょう。
いずれの例も、ポールウォーキングで疼痛や負担を軽減しながら距離を延ばすことができます。
それから運動をやるうえで、最もかかわりが深いことがあります。それは栄養とカロリーです。
運動ばかりに目が向けられがちですが、これと同じくらい栄養とカロリーを補う事はとても重要な事です。ここには、五大要素が書いてありますが、これをバランスよくとることが必要です。運動はカロリーを消費します。その消費された分のカロリーを取らないと、かえってやせすぎてしまい、運動能力が下がる事があります。ダイエットとは違いますので要注意です。
近年・フレイルとかサルコペニアとかロコモティブシンドロームなど、耳にする機会もあると思います。
大まかにいうと、フレイルは運動能力だけでなく心も含めた心身の衰え サルコペニアは筋肉の衰え ロコモティブシンドロームは骨や関節、筋肉といった運動器の衰え を意味します。



これまでの事を総合して考えると、正しい運動が行えていないと、この様に悪循環の連鎖になってしまいます。
主症状があります。これを治したいと思い、また運動したいリハビリしたいと思います。極々普通に考えることです。しかし、これがここに挙げられているようにテレビや雑誌で取り扱っていたから、とか皆がやっているからとか、知人に勧められたからとか、専門ではない人からとか、やり方を間違えて運動をしてしまうと病状が悪化し、新たな問題や主訴を抱えてしまいます。これが、長期化すると先程挙げたロコモティブシンドロームやサルコペニアやフレイルに陥ってしまう可能性があります。なので、正しい運動を行うという知識が必要になります。
そこで、少しでも疑問や不安に思ったら信頼のできる医師やセラピストに相談しましょう。
見分け方は、絶対に年齢のせいにしない 時間をかけてちゃんと話を聞く 病気じゃなくて自分という人間に向き合ってくれているか で見極めましょう。
そして、自分が良くなって心身の状態が引き上がったら、自分に関係する周りの人たちにを引き上げてあげましょう。先に述べさせていただいたWHOの定義にもあったように、その輪が広がって社会全体が良くなること、これが私の目指す真のリハビリテーションです。少しでも多くの人が、本当のリハビリテーションという言葉を理解し、行動していただけたら幸いです。


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