活動報告

第28回例会卓話「将棋について」

2019年02月08日

「将棋について」
    日本将棋連盟八段 桜井昇様

皆様こんにちは。日本将棋連盟8段の桜井昇でございます。
私の出身は群馬県の北軽井沢。夏は非常に良いのですが、今頃は雪が積もっているのではないですかね。
母の弟が将棋を大好きで、二十歳の時に高崎に住んでおられた金子金五郎先生、木村名人なんかと争った先生ですけど、お坊さんになっちゃってお寺に高崎にいました。母の弟は二十歳の時に金子先生、「ひとつプロにさせてください」と申し込みましたけれども、「何を言っているんですか、あと10年若くなければダメです」ときっぱり断られたそうです。で、櫻井家の親戚中回って、「誰かいないか」と思ったら、私が小学校の1年生で将棋を覚えて、3年生の冬休みに北軽井沢までおじさんが来まして、「昇、将棋やるのか」と非常に喜んだのです。私が小学校3年生で、10歳でしたから、「おいじゃあ磯部にいこう。磯部へ行けば、デコイチの汽車が見れるぞ」と。北軽井沢というところは、軽井沢と草津温泉のちょうど真ん中くらい、豆電車が走っておりました。その電車はあまり面白くないので、「汽車が見られるなら行っちゃおうか」ということで、親父に相談したら、親父も「3つ下の弟がいるから、おまえは行け」と言われましてね。小学校4年になった時に磯部温泉へ行きました。小学校4年の秋には、今度は高崎の金子先生のところにお邪魔しまして、1年、先生にお世話になって、金子先生の紹介で、原田泰夫、当時8段、「30歳までに名人になるぞ」といった先生でしたけれども、ちょうど30になるとこでした。約6年間お世話になりまして、非常に原田先生には感謝しております。
私は弟子が結構多いですけど、今、6人、千葉涼子さんの女の子含めて7人、あと6人がちょっとダメでしたね。残念ですけど、3段で2名、2段で1名、1級と初段で1名ずつ、6人はダメでしたけど、今は普通の仕事について、結婚もして、子供も出来て、非常に私は安心しました。中田宏樹8段とか村山とか、飯島とかいろいろいますが、もう一歩でタイトルをとるのは難しいですね。このタイトルとると言うことは、羽生さん、あと今売り出している藤井聡太君、高校1年ですけれども、中学生の頃、29連勝しましてね、やっぱり天才ですね。羽生さんは100回目のタイトル、こないだ逃しましたけど、やっぱり天才。ずば抜けた精神力を持っていて、ずば抜けた才能がありますね。羽生さんと藤井君は。ただもう一つ大事なことがあるのです。よく大きな勝負で勝ったプロ棋士は、「運が良かった」という言葉を口にします。強運の持ち主、生まれつきの。これはやっぱり、羽生さんとか藤井君、敵わないですね。並の棋士では。この2つを持っている上に努力しますから。やっぱり羽生さんと藤井君はすばらしいです。私も弟子は、中田弘樹君はじめ、6人いますけれども、タイトルをとってほしかったけれども、中田君がちょっと惜しかったですね。谷川さんと王位戦を争いまして、最初2番勝ったのです。これはいいぞと。「どこでお祝いする」って言っちゃったのがまずかったですね。(笑)その後、4連敗くらいまして、中田君も谷川さんは嫌いだと言っていました。中田君が惜しかった。あと、村山君と飯島君も、相当行くと思ったのですが、Bクラスです。私もBクラスでしたけど、ちょっと残念です。横山泰明君、これがちょっと調子良いです。結婚したせいか。奥さんが良いのかもしれませんね。今、7勝2敗、あと1勝で上がれるかもしけませんけれども、結構厳しいのです、この世界は、1年間各クラスで2人しか上がれないのです。順位というのがありまして。9勝1敗とっても、上に9勝1敗がいると、もう上がれないです。だから藤井君は全勝で上がらなければいけなかったのですが、こないだ負けっちゃいました。彼は順位がうんと下なので、同じ1敗で順位が上なのが3人います。そうすると最後勝っても上がれないのです。厳しいです。非常に厳しい世界で。全勝では上がれても、9勝1敗で上がれないっていうのは、多少、制度が悪い意味もあるのですけど。まあ仕方ないですね。9勝1敗で涙のんだ人もたくさんいますから。あと藤井君の良いところは、中学2年生で4段になりましたから。中学生の時代に29連勝しました。あれはすごかったですね。将棋ファンが沸きました。中学生でしたから。今、高校1年ですけど、彼の才能はこれから伸びると思います。羽生さんといい勝負くらいのタイトルをとるのではないですかね。
私も去年の8月に、小学校1年生の松村裕太君という弟子をとりました。10年ぶりです。この子は、1年生ながら結構、将棋強いです。強いけれども、あと5年くらいたって小学生名人になったら、この子の運は強いかもしれません。やっぱり小学生名人になったのは、羽生さんもそうですけど、だいたい、いいところへ行きますので、小学校5,6年で小学生名人になったらいいなと楽しみにしております。
あとは、大山名人ですね。この方は生涯69歳までA級でした。生涯勝ち星が、1433勝。羽生さんもいま凄いです。1410勝に行きましたか。ですから、あと22、3勝で大山先生の記録を抜きます。この時は、もう羽生さんが、私は将棋界で一番強いのだなと、誉めてあげたいです。大山名人の記録は破れないと思っていましたから。羽生さんはやっぱり素晴らしいです。才能がありすぎます。あと藤井君が羽生さんを追っかけてどこまで行くか。非常に楽しみにしております。
原田先生は、弟子を見るときに「この子の一番いいとこだけを見なさい」こう私に教えてくれました。この子の一番伸びそうなところだけでいいと。一つでいいから。私はその通り、中田君や、飯島君や村山君に。やっぱり人間って面白いですね。みんなやっぱり違いますんで。性格も。ですから、いいところを見るのが結構大変なのです。この子の一番いいところは何かとみるのは。1番弟子の山田君というのは、なんとなく人が良かったせいか、勝負師には向かなかった。2番目にとった、中田宏樹君は、あまりしゃべらずに無口で、この子は伸びるなと思ったら、案の定、山田君は2段でダメでしたけど、中田宏樹君は19で4段になりました。その後に羽生さんが中学3年で4段になってきましたね。中田宏樹君と羽生さんもうちで約1年ちょっとくらい、あと2人くらい加えて将棋の研究会をしました。中学3年だったけど、羽生さんは強かったですね。中田兄弟子にも友達の4段5段にも負けませんでした。だからやっぱり才能のある人間には敵わないのですかね。あと運。この運の持ち主は羽生さんであり、藤井君であり。これもね、やっぱり普通の棋士では勝てないようになっている。これが不思議なのです。なぜ勝てないか。やっぱりずば抜けた才能と強運の持ち主。運ですね。運も生まれたときから備わっていると、私は思うようになりました。才能と運、それと努力と。こういう人にはなかなか将棋も勝てないような気がいたします。
最後に、今、将棋界はいい時を迎えました。非常に物が売れるし。こんないい時期は今までなかったと思いますね。これはやっぱり藤井聡太君のおかげかもしれません。あれだけ中学生に人気だして、彼の物はほとんど連盟で売れますし、今、将棋連盟この100年間で一番いい時代かもしれません。ということは、才能のある棋士が生まれる、まして若くして強くなる。これは非常にうれしいことです。藤井君には感謝しております。ただ彼も名古屋なんでね。できたら、大山先生や増田先生みたいに、大阪でしたけれども、東京に出てきましたから。勝つ人は対局がものすごく多く70局くらいあるのです。年間。ですから名古屋だと、大阪行ったり、東京へ出てきたり、結構大変だから、彼も20歳過ぎたら、あるいは25くらいになったら、東京に出てくるような感じがしますね。そうでなければ、体力が持ちません。また体力の話しですけれども、やっぱり50すぎると厳しいですね。羽生さんなんかも今、47ですから、あと2,3年ですね。これは大山先生もそうでしたけど、どうにもならないのです。順位戦というのは、各自、持ち時間が6時間ありまして。朝10時に始めて夜中の1時くらいに終わるのです。1局の対局が。そうすると、私も50過ぎて感じたことは、11時になるとどういうわけか、眠くなるんですよ。(笑)脳が寝ろと言うのですかね。11時過ぎると。ですから、羽生さんなんかもよく頑張っているけど、大山先生も50過ぎたらタイトルは王将を1回とっただけですから。結構50過ぎるとダメですね。だから将棋も体力が必要です。50過ぎるとやっぱり落ち目になります。でもまあ、碁も将棋も50、60まで指せるということは、野球とかサッカーに比べて、非常に良いことですけれども。私も23で4段になって65まで指しまして、43年くらいやりましたかね。結構長くやらせてもらって、良かったと思います。
将棋で誰が一番強かったかというと、木村名人は強かったらしいですね。A級の人に香落ちで勝っちゃいましたから。それで関根先生は、これじゃいかんと、坂田三吉に関根先生は負けましたので。平手で。大阪の。じゃあ実力の世界にしようといって、木村名人が初代の実力の名人です。強さにおいては、大山名人、強かったですね。あと中原さん。で羽生さんですね。羽生さんはこれからどうなるか。50過ぎても頑張れるか、非常に興味があります。あと藤井君。何回も言いましたけど、素晴らしい青年です。才能があり、運があり、努力をしていると思いますのでね、これからどれくらいタイトルをとるか、非常に楽しみにしております。
ありがとうございました。

質問
精神力。集中力は努力でなんとかなるのか。コツはあるのか。
集中力ですね。加藤一二三さんなんかは長考派で、1手に1時間半くらい考えたこともありますしね。石田9段も長考派で1時間考える。何考えているのかと思うのですけれども。わかんないですね。笑 無駄だと思う意味もありますね。だけど集中力というのは、そう長続きはしないですよね。ですから、最初に映ったのが最善手だとよく言います。1手目に浮かんだ手。これが一番正解率が高いと。だから直感も大事ですね。ダラダラダラダラ考えてもね。100手考えても、枝葉によって10通りくらい行くのです。次に私がこうやったら相手はこう来ると。これが枝葉でね。10手ずつやっても100手は行きますから。10通りくらい考えると頭がクラクラしてくることもあるんですよ。だから、集中力と直感。これは似てきますね。直感を大いに大事にしてください。それで結構ですので。

強くなって行く上で、どんなことを心がけたら良いか。
雁木の後に来るものは何か。
一つ目はなるだけ、3段、4段と強い人とやってください。負けることを恐れないでもらいたい。負ける方が勉強になるんですよ。勝つとだいたい忘れますね。負けた時に「あーあそこであんな悪い手やった。1手だけで負けた」という印象が強ければ、必ず強くなります。
あと雁木の次はね、今、若手の棋士が研究し合っているのですけれども。雁木は昔、ダメだって言われたのですよ。今はもう藤井君のおかげですかね。彼が雁木の将棋が好きなのです。で勝率が良いものだから。みんなプロ棋士は真似をしている最中です。だから、雁木の後は何が流行するかわかりません。将棋も生き物ですから。また新しい戦法が出てくると思います。

人の対局とAIコンピュータの対局の違いはなんでしょう。
今、碁も将棋もAIが強すぎるんですよ。なぜこんなに強くなったのかわかんないのです。私は30年持つと思ったのですけど。プロ棋士が勝つ方。今、佐藤名人が負けているでしょ。3回も4回も。なんなんですか。私が逆に聞きたいのです。AIって何ですか。(笑)人間が作っているのですよ。東大の将棋部が。それで今、機械同士でやっているんですよね。機械同士で。また強くなるって言うのです。野村證券の人に聞くと。だから本当は碁や将棋ばっかりやっつけないで、なんか病気とか癌とか、なんかそっちへ知恵を働かしてほしいね。私は。碁、将棋をやっつけてもしょうがないでしょ。(笑)なんとか病気治すとか、もうちょっと世の中に役に立つことを、AIはやってほしい、こう思います。

桜井さんはちなみにAIとはやりますか?
いやー、もう負けるのがわかっているからやりません。(笑)だって名人が勝てないのだもん。どうしてそんなに。人間が作ったんですよね。AIって。東大の将棋部が。不思議ですね。やっぱり機械には勝てないので、ある八王子の将棋ファンは、もう機械は機械、人間は人間、人間同士でやるから楽しんであって、機械はひとつも面白くないという話しも聞きました。でも、不思議です。こんなに強くなったのは。全然私はわかりません。七不思議のひとつです。まあ、そろばんも何もかも機械には勝てないから、将棋とか碁とか組み合わせるのは、そうなるのですかね。やっぱり優秀なのでしょ、機械は。「うーん・・」(笑)正直言うと、誠に将棋のプロとして残念です。

雁木とは?
戦法は居飛車ですね。銀が二つ並ぶのです。5筋と4筋に4-3銀と5-3銀と。王様は下で金は下。昔はね、雁木っているのは勝率が悪かったのです。やると負けてたんだけどね。藤井効果なのかな。いい戦法になっています。今一番はやっています。10局のうち、7局か8局は。

先手がやると有利なのか。
いや、後手もできる。両方ともできるのです。いい勝負なんです。守りの戦法ですね。

プロ同士がやるときはなんて先まで読むのか。
枝葉がどんどん増える場合には、500手は行くでしょうね。ということは、15通りくらい。私がこうやって、相手がこう来ると。違う人とやった場合は、違う人はこう来ると。これを枝葉っていうのですけど。15通りくらいになっちゃうと、10手ずついっても150。20手ずついくと300。それくらいプロ棋士は読みますね。読むのですけどね、勝つわけに行かないんですよ。(笑)これが将棋の難しいところで。相手がもっといい手をやってきたら、負けるのです。ただ、一番いえることは、将棋は悪い手を指した方が、だいたい負ける確率が高いです。いい手より、悪い手の方が。よっぽど将棋は厳しいのですね。碁なんかに比べると。1手悪い手指して負けます。だから大悪手なんですね。それは。見ているとね、増田9段なんかあるいは大山名人なんかは、やっぱり悪い手指した方が負けているのですよね。大山、増田戦なんかは特にね。この好手で勝ったって言うのは聞かないのですよ。悪手を指しちゃダメなのだけど、悪手も指しちゃうんですよね。人間だから。だけど機械は指さない。だから強いのかもしれませんね。


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