活動報告

第15回例会卓話「児童虐待と児童相談所の役割」

2019年10月18日

「児童虐待と児童相談所の役割」
橋本陽子会員

私は、神奈川県弁護士会のこどもの権利委員会に所属し、児童相談所で非常勤として週一回働いております。昨今、児童虐待の痛ましい事件が報道されることも多くなっております。皆さんもテレビのニュースなどをご覧になって、児童相談所は何やっていたんだと思われたこともあると思います。また、救えた命があるのでは・・と思われているのではないでしょうか。本日は児童虐待と児童相談所の役割について、お話をさせていただこうと思います。
 児童虐待の種類は、身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待の4つに分類されます。昨今、夫婦げんかの目撃も心理的虐待に分類され、警察から児童相談所への心理的虐待の通告が増えています。
 今でこそ、親による暴力は「虐待」と言われますが、皆様のご経験からも「父親から殴られた」などという話はよくきいたし、当然のことにように感じることもあったのではないでしょうか。その根拠は民法に定められている懲戒権です。悪いことをした子供を親が叩く、ということは一昔前では当然のように考えられていました。しかし、現代では親が子供に対して暴力をすることはいかなる理由があっても、児童虐待防止法では「虐待」と定義されます。客観的に虐待している親が必ず口にするのは「しつけ」のためということです。そこで民法のこの規定の見直しについて、現在さまざまな議論がされています。
 さて、児童虐待が疑われる子が学校で発見されたケースの、手続きの流れについてお話させていただきます。学校でこどもに痣があると、先生がこどもに原因を聞きます。そして虐待が疑われると、学校から児童相談所に連絡がいき、児童相談所の職員が面会します。その結果、虐待が疑われるケースであれば、こどもの安全やさらなる調査の必要性から「一時保護」されます。
「一時保護」された児童は、一般的に児童相談所が設置する「一時保護所」にいきます。これはいわゆる「施設」と呼ばれる児童養護施設などとは異なり、あくまでも一時保護のための施設です。原則として一時保護所からの通学などは認められません。
 一時保護をすると、親に一時保護をした旨連絡をします。そして児童福祉司が早急に親と面談します。面談では、一時保護した理由を伝え、処分に対する親の意見を聞くとともに、こどもの受傷の経緯についても親に説明を求めます。親が虐待を否定するケースも少なくありません。家庭内で起きることなので、客観的な証拠は少ないことが現状です。転んだとか、階段からおちた、などと反論された場合、対抗できるでしょうか?本人が親から口止めされていて、親に叩かれたと話さないこともあります。
親が認めるケースはやりやすいです。殴ってしまったことを振り返り、暴力のない子育てについて」親への指導もします。一時保護解除をして自宅に戻しても、継続的に支援を受けられるケースもあります。親が否認するケースは厄介です。まず、虐待を否定していれば、一時保護についても不満でしょうから。まず、すぐに帰せ!といいます。この場合、帰さないといけないでしょうか?
親権者には、こどもについて、民法で監護権、居所指定権などが規定されており、児童相談所が、親の意に反して一時保護をしたり、施設入所をさせることは親権を侵害する行為となります。
そこで、児童福祉法などがこどもの安全を守るため、児童相談所に一定の権限を定めています。
まず、児童相談所は、職権で一時保護をすることが認められています。児童相談所長は「必要があるとき」は、職権で一時保護ができます。期間は2か月に限定されています。その後、親の意向に反して一時保護を延長する場合は、家庭裁判所の承認が必要となります。
一時保護の間に養育環境などの調査をし、その結果、児童相談所が、自宅に返せないという判断に至れば、施設への入所等が検討されます。施設の入所についても、原則として親の意向に反してすることはできません。親が反対していても当該こどもの安全やその福祉のために家に帰せないというケースでは、家庭裁判所に施設入所の承認を得る審判の申し立てをします。これは児童福祉法28条に規定されています。
昨今、児童虐待に関する痛ましい事件があります。児童虐待は家庭内で起こるので、発見はなかなか難しいのが現状です。社会全体でこどもたちの安全を守っていかなくてはなりません。児童虐待が疑われるケースを発見した場合は、「189」(いちはやく)のホットラインまでお電話をお願いします。
以上


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