活動報告

第18回例会卓話「出生前診断」

2019年11月08日

「出生前診断」
明石敏男会員

先天異常は生物が存続していく過程で必然的に発生し、しかもその頻度は 比較的高く、ヒトでは約3~5%の頻度で発生するといわれている。この先天異常の原因には偶発的に発生した染色体異常や内的因子(たとえばいわゆる多因子遺伝によるもの)が大部分を占めるが、外的因子(いわゆる環境要因)もある。これらの異常を胎児の段階で診断しようというのが出生前診断である。

これらの外因的因子による先天異常の発生は全先天異常症例のうち約 5~10%程度とされる。薬剤によるものはさらに少なく、2~3%程度とされている。しかしながらこれらの環境要因は防ぎうる因子である。
流産の50~70%に染色体異常を伴うとされる。 流産の80%は妊娠12週までに起きる。染色体の数的異常を伴う場合、75%は妊娠8週までに流産となる。 数的異常が無い場合、妊娠13週までに流産のピークがある。 配偶子・受精卵の染色体異常 ・卵子の染色体異常は母体年齢の上昇に伴って増加する ・精子の染色体異常は存在するが、父親年齢の上昇に伴って遺伝子レベルの 変異が増加する ・受精3日目の胚では、50%に染色体異常があり、その後は発育できないも のが増え、新生児としての出生まで到達しない

・流産の染色体異常では60%に常染色体トリソミーが認められ、そのうち最も多いのは16番染色体のトリソミーである ・16トリソミーの他には、13、15、18、21、22番のトリソミーが多い。21トリソミーはダウン症といわれる
染色体異常は母体の年齢が上がると発生率が高くなってくるが、 日本では年々出産年齢が上昇しているので、これがさらに問題となっている。このため、遺伝学的な検査を出生前に行って胎児の異常を診断することが 行われるようになってきた。  侵襲的検査は確実な結果が得られるが、流産になるリスクを伴う。 非侵襲的検査は母体血を使用するため胎児・母体に対するリスクは無いが、確実性に欠ける。(擬陽性、偽陰性がかなりある)このため、陽性と判定された場合は侵襲的な検査を行って、診断を確定する必要がある。非侵襲的検査の精度をあげるために、新型の検査(NIPT)ができたが、これも以前からの検査に比べれば確実性は上がっているが、100%確実では ない。やはり、結果が陽性に出た場合は羊水検査が必要になる。診断がはっきりついても、染色体異常の治療法は現在のところまだない。iPS細胞を使っての治療法も研究されているが、まだ実用化にはほど遠い。従って、出生前の染色体異常検査は、染色体異常が判明した時点で人工妊娠 中絶を選択することが多い、という倫理的な問題がある。
NIPTの問題点 母体血のみで検査できるため、採血して検査センターに送るだけの検査な ので、どこの施設でも可能。中には検査結果の紙だけを渡して、詳しくは専門家に相談するように、というところもあるようである。日本産科婦人科学会では、「出生前に行われる遺伝的検査および診断は、 十分な遺伝医学の基礎的・臨床的知識のある専門職(臨床遺伝専門医等)による適正な遺伝カウンセリングが提供できる体制下で実施すべきである。ま た、関係医療者はその知識の習熟、技術の向上に努めなければならない」 と、安易に検査を受けるのではなく、遺伝カウンセラーなどを含めた体制が 整った施設で検査することを推奨している。


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