活動報告

第32回例会卓話「達老のための脳活性法」

2015年03月06日

「達老のための脳活性法」
横浜市立脳卒中・神経脊椎センター
病院長  山本勇夫様

日本人の平均寿命は2013年には男女ともに80歳を超え(男性:80.21歳、女性:86.61歳)、女性は世界第一位、男性も第四位と長寿大国ですが、健康寿命(介護を必要とせず、自立した生活を送れる期間)は男性70.42歳、女性73.62歳と、その差すなわち「不健康寿命」は男性で約9年、女性で約13年あるわけです。このように平均寿命は延びたけれども、その分だけ不健康な期間も長くなってしまったというのは、現代の日本が抱える大きな課題です。そこでこの「不健康期間」を短くするためにはどうすべきかについて、私が実際に接触した人や、現在第一線で活躍している人、さらに歴史上の人物をも含めて“長寿で元気”な人の10の特徴について述べてみます。
1) 姿勢がよい
 肩を丸めて首を前に突き出した猫背の姿勢は、頭を支える首や肩の筋肉に凝りや緊張が生じて血行が悪くなり、また、胸が縮んで胸郭が圧迫され、脳の栄養源である血液中の酸素が脳へ十分供給されなくなります。オーケストラの指揮者、声楽家、高僧など姿勢がよい方は健康長寿です。
2) 好きなものを食べる
 食べること自体が脳に対して刺激となるばかりか、箸を使って食べ物を口に運び、それを咀嚼して飲みこむなどの一連の運動が脳に多くの刺激を与えます。ただし、貝原益軒は「養生訓」の中で「腹八分に医者いらず」と量をやや控えめにすることすすめています。また、肉の中には “うつ状態”を抑制するセロトニンの原料(トリプトファンというアミノ酸)が含まれているため、高齢者ほど肉は食べるべきであり、肉類が好きな元気な高齢者には日野原重明氏、瀬戸内寂聴氏、森光子氏、三浦雄一郎氏など枚挙にいとまがありません。
3) とにかく笑う
 笑うことで血液中の白血球からガン細胞の殺し屋と言われるNK(natural killer)細胞が活性化されたり、身体の免疫力がアップするといわれています。長寿の双子として有名だったきんさん、ぎんさん、またぎんさんの4姉妹の合計が380歳でいまだ健在であること、さらに「指圧の心母心-----ワッファファ」の浪越徳次郎さんなどを思い出します。
4) 1日40分は身体を動かす
 身体を動かすことは筋力やバランス感覚を維持し、全身の血液循環を良くして余分は脂肪を燃焼させます。このような有酸素運動は内臓脂肪や皮下脂肪がエネルギー源として利用され、腹囲や体重が減少するばかりか、血糖値を下げる働きもあります。さらに、血管の柔軟性を高め高血圧の予防にもなります。
5) わがままでノ―天気
 自分自身の言動を肯定的にとらえ、自分のやることが周囲に受け入れられているといった感じの人、すなわち「楽天主義」「能天気」「自己中心主義」の人は元気です。作家の渡辺淳一氏はこのような健康法を「唯我独尊の健康法」と述べていました。英国の元首相チャーチル氏の語録に「悲観主義者はすべて好機の中から困難を見つけるが、楽天主義者は困難の中に好機を見いだす」という言葉があります。
6) 新しいことに臆せずチャレンジする
 常に好奇心を失わず、新たな挑戦にも積極的に取り組んでいる人は、やる気や創造性を引き出すドーパミンという脳内ホルモンの活性が高まります。画家の小倉遊亀氏(105歳)、片岡球子氏(103歳)、奥村土牛氏(101歳)など多士済々です。米国の詩人サミュエル・ウルマンは「ただ年齢を増すことによって人は老いるのではない、人々が老け込むのは希望を捨ててしまうからだ」という名言を残しています。
7) オシャレを気にする
 年齢を問わず「人から見られている」という緊張感は、心身共にシャキッとした状態を保つ手立てになるばかりか、対人積極性を高め、人の輪が広がり、“うつ状態”を抑制する効果があります。日本初の障害児教育施設「しいのみ学園」の創始者である曻地三郎氏は「オシャレをしなくなった日から老いが始まる」と述べています。
8) 好きなことに惜しまずお金をかける
 「養生訓」に「養生の術は先ず心気を養うべし、心を和にし、気を平らかにし、怒りと慾を抑え、憂い、思いを少なくし、心を苦しめず、気を損なわず、是心気を養う要道なり」という一節があり、健康を保つためには精神的ストレスを少なくすることの重要性を述べています。脳科学的には、精神的ストレスがあってもくよくよせず気にしないでいれば、やがてストレスをストレスと感じ易くする有害な神経細胞(シナプス)が廃用萎縮して、ストレスを感じない状態になって克服できると考えられています。
9) 何事にも勤勉・誠実
 カリフォルニア大学の研究では、高齢で元気な人は一般に仕事のみならず何事にも一生懸命に励み、果たすべき事をきちんとこなす勤勉性⋅誠実性を持っていると報告しています。
10) 色気を忘れない
 恋愛をしている時は脳内で快感ホルモンのドーパミンが分泌されます。120歳で大往生した男性世界一長寿者の泉重千代氏(120歳)は、ギネスブックに載ることになった時、レポーターの「女性はどういうタイプがお好きですか?」の質問に「やっぱり、年上の女かのぉ」と答えたそうです。


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