活動報告

第39回例会卓話「子供ホスピスの夢」

2015年04月24日

「子供ホスピスの夢」
~横浜に小児ホスピスを創りたい~
認定NPO法人スマイルオブキッズ
代表理事 田川尚登様

私たちNPOのミッションは、病気や障害がある子どもと家族の支援です。現在私たちは、患者家族宿泊滞在施設リラのいえの運営事業、きょうだい児預かり保育事業、重症心身障害児と家族への音楽支援事業の3つの柱の活動を行っております。
活動のきっかけは、1997年幼稚園年長の娘が6歳の時に頭痛や吐き気を訴えましたが、すぐに診断が出ず、3か所の小児科を経て、ようやく総合病院で脳の神経の集まっている脳幹に腫瘍(脳幹グリオーマ)が見つかりました。その時点で余命半年を告げられました。・・・・娘にとって余命通りのわずか6年半の人生でした。

私にとってこの半年の時間に娘を通して大変意味のある経験をさせていただきました。脳腫瘍でも幼児期に発症する悪性の脳幹グリオーマは現在でも治療方法は無く死を待つだけなのです。よって余命時間の使い方が子どもにとっては重要になります。家族との楽しい時間を過ごすことが、また好きなことに時間を費すことが思い出づくりになります。ひょっとして免疫力が上がり、延命時間が延びるかもしれません。・・・・
私たちもできるだけ子どもの意思に従って時間を過ごしていましたが、子どもとの旅行後、病院で呼吸が止まってしまいました。人口呼吸器で一命は取り留めたものの脳死に向かって進んでいきました。主治医や医療スタッフと協議を重ね、呼吸器を外す日時を決め、家族と娘の関係者にも看取られ旅立って行きました。

それから5年後、彼女の生まれてきた意味がこの一生にあったのではないかと思い、献身的に治療を行っていただきました横浜市南区にある神奈川県立こども医療センターで、何か小児医療の課題解決のための支援ができないかとNPO法人を立ち上げ、患者家族の支援活動を始めました。当時は子どもとの面会時間は午後3時から7時迄で、寝付く前に帰らなくてはならず、娘との別れが毎日泣き別れの状態で非常にかわいそうな毎日を過ごさせていました。重い状況になっても近くで休息がとれるところもなく家族は病院のロビーや車の中で休息を取るという毎日を送っていました。こんな課題を解決しようと娘がお世話になったこども医療センター近くに病院のOBたちと協力し、全国から難病の治療に来られる家族対象の宿泊施設を建てようと動き出し、県への要望書や議会での質問により必要性を訴えてきました。県からは財政が厳しく、建設資金を募金で集められれば病院近くの用地の一部を利用できるとのこと。建設資金は私たちがチャリティーコンサート活動で募金を集め、篤志家からの多額の寄付により2005年より募金活動を始めてから3年半後に建設することができ、(土地は県からの20年間無償提供)2008年6月にオープンできました。1泊バス・トイレ付の部屋を1,500円で利用していただき、24時間365日ボランティアスタッフで管理しています。年間約4,500名の神奈川県内、全国、海外の家族に利用されています。それ以外にも課題は多くあります。病気のこどものきょうだい児は病室や診察室に入れず、室外でじっと待っていなくてはなりません。核家族化によって身内や親戚に預けることができない家族が多く、きょうだい児も親からの愛情を受けられずにストレスを常に抱えた毎日を送っています。愛情不足は思春期に必ず問題を起こします。私たちはそのようなきょうだい児に視点を当て、宿泊施設のリビングを使い専門保育士による預かり保育を行っています。また生の音楽をコンサートホールで聴くことのできない重症心身障害児と家族とが一緒に車いすやバギーに乗ったまま音楽を聴くコンサートに毎年県内の子ども達と家族を招待しています。すべて赤字事業なので助成金や寄付に頼らざるを得ませんが、現在は皆さんからのご支援で成り立っています。

しかし患者家族の支援の先には治療方法もいまだ解明できていない病気で死に直面している子ども達が多く存在しています。病院と家庭だけで過ごすのではなく、子ども達の残された時間を有意義に使いながらその子にとっての楽しい時間づくりを家族や支援スタッフと共に考え、家族とも一緒に宿泊できる在宅支援を主とした中間施設が必要です。その先にある死を見つめながら家族との楽しい思い出づくりや子どもが希望する夢に一歩でも近づくお手伝いができれば免疫力も上がり、命が輝く時間が増えていくように思います。私たちはこれが至高の支援ではないかと考えました。その施設とはホスピスというイメージからくる緩和ケアの施設ではなく、生の充実を皆で考えていく家庭的な第2の我が家と同じような暖かな施設なのです。治療方法がない子供たちは病院と家庭だけしか行き場がありません。看取りまでできる在宅支援施設が子ども達には必要なのです。
この夢に一歩近づくための支援が一昨年私たちのNPOにありました。同じ夢を持っていた藤沢市在住の元看護師の石川好枝さんのご意志でした。彼女に残された遺産を小児ホスピス建設に使いたい夢でした。私たちは彼女とのご縁で、遺産1億500万円を原資に一歩前に踏み出すことになりました。

またこの夢を叶えていくために多くの賛同してくださる仲間が集まり、昨年8月15日に横浜小児ホスピス設立準備委員会が発足し、会合を続けながら募金や広報活動をしています。昨年の段階で建物の概略のたたき台を作成し、概算の見積金額3億円を広報活動や音楽家の力を借り、チャリティーコンサートやイベントを開催しながら募金を募り、5年後の設立を計画しております。

イギリスでは52か所の小児ホスピスを宗教の教義やお国柄により、まず子ども達の課題から考えようという意識があり、地域住民の寄付で運営しているということで、とても日本では考えられない運営方法ですが、この運営の仕方で欧米には小児ホスピス設立が広がっています。私たちも欧米の運営システムが理想と捉え、神奈川県、横浜地域の企業の皆様の力をお借りしながら運営できるシステム作りを目指していきます。チャリティーコンサートを開催しながら広報活動と募金活動を行いますので、本日のように多くの皆様の前で話ができる機会を与えてください。今後ともご支援をどうぞよろしくお願いします。

活動報告一覧へ戻る

Top