活動報告

第41回例会卓話「事業承継について・相続リレー III」

2015年05月15日

「事業承継について・相続リレー-III」
石渡宏道会員

相続リレーⅠ・Ⅱで安友さん大山さんから自然人の相続について、解りやすいお話がありましたが、私は法人の相続即ち「中小企業の事業承継」についてお話をさせてください。そもそも日本の中小企業は企業全体の99.7%を占め、そこに働く人は70%弱いるといわれ、日本経済にとっては欠くことのできない存在です。その中小企業が近年減少傾向にあります。原因は経済環境の変化に伴う業績の低迷に加え、後継者が見つからないことが大きな問題になっています。そこで本日は何故事業承継が進まないか、事業承継とは何かについてお話を進めたいと思います。
Ⅰ 事業承継が進まない本当の理由(私見です)
1 社長業ほど楽しい仕事はない。だからその地位を手放したくない。
2 仕事一筋で他人のアドバイスを受け入れられない、頑固で他人の言うことを聞かない。
3 本当は跡を継いでほしいにもかかわらず、子供には「好きな道を行け」と言っている。
4 社長業の大変さばかりを妻や子に伝えているため、子供が継ぎたがらない。-母親の影響が大-
5 引き継いだ後会社がうまくいくか心配でもう少し状況が良くなってから渡そうとしている。
6 日常の仕事に追われ、後継者育成にエネルギーを注いでいない。
7 会社はオレのもの、の意識が強すぎあらゆるステークホルダー(特に従業員)のことを考えない。
 これら思い当たるフシがあったら要注意です
Ⅱ 事業承継とは次の三つがポイントだと思います。
1 経営の継承
経営権(議決権)の承継で会社運営上の決定権、会社財産の処分権など一切の権利です。
2 財産の継承
自社株式や事業用財産を次世代に継承させる
3 意思の継承
経営理念やファミリーの家訓や信条想いを次世代に継承することで、私はこれが最も価値ある承継だと思います。
 いずれにしても企業はゴーイングコンサーン(継続企業)の立場からも承継計画は早めに進めなければならないと考えます。
Ⅲ 事業承継計画について
  スライドでお分かりのように事業承継の計画から実行まではかなり時間を要します。わたしの経験では5年から10年ぐらいかける必要を感じます。
  特に大切なのは後継者の選定と育成方法の検討、現経営者と後継者との間での引継ぎ期間の設定、役割分担、経営者の意志・想いの文書化、事業に携わらないファミリーへの財産分配計画等、力仕事となります。
Ⅳ 事業承継の方法
  事業承継は子供や身内等に継承される「親族内承継」と従業員やM&Aのように「親族外承継」に大別されます。それぞれにメリットデメリットがありますが、近年の傾向は子供への承継が年々減少し、M&Aが増加していることです。私が実際に関わった案件では、お子さんはそれぞれの道で活躍をしていて父親の仕事(工事業)を継ぐ意思は全くなく、従業員に継がせるべく準備したが、条件的に無理なことがわかり、結果M&Aで事業承継が成立した案件がありました。
Ⅴ M&Aについて
  M&Aと言えば、年配の方は白木屋や富士屋ホテルの乗っ取り事件等で悪いイメージをお持ちの方がいると思いますが、最近では後継者難や商法・会社法・独占禁止法等の法律改正により規制緩和の影響でM&A自体に抵抗感がなくなってきている。
   現在は毎朝の日本経済新聞でもM&Aという言葉が載らない日はないくらいに日常化しつつあるといっても過言ではないかと思います。因みにM&AのMはMerger(合併)でAはAcquisition(買収)で会社または特定の事業の支配権を第三者に譲渡する行為です。ここで大事なことは譲渡する側と譲り受ける側がそれぞれの経済合理性に基づいて交渉するプロセスが重要になってきます。
   特に中小企業のM&Aは大企業のそれとは違い中小企業独特の特徴・個性があります。一つは中小企業はオーナー経営者の属人的経営手腕に依存していることです。ワンマン・カリスマ経営、経験と勘と度胸の経営、外部・内部ともに情熱的な人との結びつき等が営業面人事面でも色濃く存在しています。二つには会計的側面も本来の企業会計というより税務会計中心の会計処理で必ずしも真実とは違うことがあります。三つは名義株が存在するように株主名簿の真実性です。こうした中小企業独特な特徴を理解しておく必要があります。
最後にM&Aの手順についてお話しします。
M&Aで最も重要なことは情報が他に漏れないことです。従ってM&Aの検討準備フェーズに入ったら先ず一番最初に行なうのが「機密保持契約書」の締結です。打診・交渉フェーズに入ったら匿名での打診開始、トップ面談・会社訪問に進み、最終契約になったら意向表明・基本合意、買収監査の実施、最終的な詳細条件の調整、最終契約書の締結となります。一般的にはこの間約6ケ月ぐらいを予定しておけばよいかと思います。
  M&Aは大企業の経営戦略の一つと考えられていた時代から中小企業にも有効な経営戦略の手段であると重要視されてきています。ゴーイングコンサーンの立場からもM&Aが有効に機能することを期待して私の話を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございます。
   参考文献「町工場の娘」諏訪貴子著 日経BP

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